地下鉄の緊急止水

最近の地下鉄はどんどん深いところまで掘り下げてつくることから、水圧の高いところを突き抜けることになる。意外と良く見ると天井からぽたぽたと滴が落ちてしまうことから、忘れ物のビニール傘をひっくり返して天井に緊急固定して水を集めてチューブで逃がしたり、ビニールをガムテープで貼って水を壁側に寄せるなどの工夫をしている。

日本の土木技術を持ってすれば完璧に水を止めてしまうことできるのではないかと、通勤途中に思う方も多いのではないか。地下鉄工事のやり方は駅舎と電車の通りトンネルとは根本的に工法が異なる。トンネル部分はシールド工法というやり方で行われている。

シールド工法とは、地盤中にトンネルを構築する工法で、「シールドマシン」と呼ばれるトンネル掘削機を地中に掘進させ、土砂の崩壊を防ぎながらその内部で安全に掘削作業、覆工作業を行いトンネルを構築していく工法である。シールドマシンは外径約5mを分割して駅の開削工事基地へ搬入する。坑内で再度組み立て,土留め壁として使用していた支保工と呼ばれるH形鋼材を撤去する作業を行い発進する。シールドマシンで掘った後にはセグメントよばれるブロックを組み立ててトンネルを造っていく。セグメントは、コンクリート製のものと鋼製のものがあり、ひとつの断面を5~6分割してこれを組み立てて円形に仕上げていく。

セグメントには、組み立てた後に地下水がトンネル内に流入しないよう、各ブロックの接着面には防水としてシール材を施す。

一方駅舎の部分は開削工法と呼ばれる工法で掘削していく。地面の土を掘り返し、構築物を建設した後に埋めなおすという工法である。工事費が安く工期が短いのが特長で、1980年代まで世界各地の地下構造物の建設工法として主流であった。地面を開削することに起因する制約も多く、地面から深い場所や、路線の上に建造物や河川などがある場合は使えない。また道路上を開削するため道路交通の障害になるという問題もあるが、交通量の多い時間帯には工事を止め、開削した穴を一時的に復工板(鉄板)で覆って上部を通行可能とすることである程度緩和することができる。

このように地下の構造物は異なる工法で建設していき地中での振動,歪みというのは事のほど大きく、簡単に緩和吸収できるものではない。屋上防水のように完全な防水を作るのは不可能に近い。また,地下水の水圧というのは想像を超えてコンクリート中を突き進んで染み出してくる。そこで,地下では水を防ぐというのではなく,水が染み出してきたら逃がしてやるという考え方をとっている。2005年に開通したつくばエクスプレスの秋葉原駅や浅草駅では,ステンレスの樋を2~3キロに渡って設置している。問題は駅構内を縦横にめぐらせた樋に勾配を付けていく作業であるという。しかし,いざ地下水が漏れ出すと駅舎の幅は約15m,大きいところで25m程度もあるので券売機や改札の横で漏水するとガードマンを配置し乗降客や機械に影響の出ないように水を避けているというのが現状である。

そこで大量に漏れ出す水を止めなくてはこのように影響が出てしまうわけで,止水をしなくてならなくなる。

止水の方法は壁に注入口を開け注入ポンプでウレタン樹脂を注入する。ウレタン樹脂は水と接触すると固結反応を起こす。注入した樹脂は、水に溶けないため、地下水に混ざり合うことはないが,水と接触した部分から固結反応が始まり、炭酸ガスを発生して浸透を進めながら固まり,注入した量の数倍の固結体が得られる。この原理で水を止めていく。固結体は、ウレタン樹脂特有の強い接着力により、土粒子が相互に強く接着し、止水性の高い高強度な固結体を形成することになる。

私どもダイフレックスで土木事業を専門に扱うレジテクト事業部では、防水や防食工事を中心として製品を取り扱っており、止水材料もそれらと併せて取り扱っている。昨今では、上記例のように新規工事ではなくメンテナンスで漏水を防ぐ方法を求められる声があることから、より良い注入剤の開発や注入方法の確立は、今後とも開発課題と言えるだろう。

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