勾配と防水

屋根の形状には、大別して「勾配屋根」「陸屋根」とがある。
「勾配屋根」は、文字通り傾斜のついた、一般的に“屋根”と言われるもので、一番多いのは戸建の住宅であろう。対して「陸屋根」は、床機能として利用できる程度に平らな屋根であり、一般的には”屋上“と言えば通りがよさそうである。
どちらも屋根であるから、雨水の侵入を防ぐという機能が必要であるが、雨水の浸入を防ぐには、水を一定の場所に留まらせず流してしまうことが最高の防衛策である。
「勾配屋根」は、傾斜をつけた形状でこの最高の防衛策を実現している。
また、金属で屋根を葺いたり瓦を載せたりして雨水を通さない材料で覆うことにより雨水の浸入を防いでもいる。ただし、金属にしても瓦にしても、継ぎ目のない状態で屋根を葺くことは出来ないことから、その継ぎ目の部分での不具合で漏水が発生することは、前出の項で述べたとおりである。
勾配で水を流すことは最高の防衛策であるが、絶対の策ではないということである。
「陸屋根」は、平らな形状で一見すると勾配がなさそうであるが、1/50程度の非常に緩やかな勾配をとり水の流れを作っている。
だが、陸屋根の建物の多くが屋根の素材がコンクリートやALCで造られており、経年によるひび割れや接合部分の継ぎ目からの雨水の浸入、材質そのものの吸水性などにより防水層が必要となる。
(折板屋根は1/50勾配のものもあるが金属屋根として扱われるため陸屋根の内容からは除外する)
勾配をつけ雨水を流すことで水の浸入を防ぐことは、勾配屋根にも陸屋根にも共通に重要なことであるが、流した水を排出することが次に求められる重要なことである。
特に陸屋根の場合は、ドレンと呼ばれる排水口に雨水を集め樋にて排出することになるため、この機能が正常に働かないと屋根=屋上部分に雨水が溜まり、プールのようになり非常に危険である。
このドレンは100㎡~300㎡に1つの割合で設置しなければならず、口径は建物のある地域の最大降水量などの条件に照らし合わせ決定される。
また、建物の形状と勾配の位置方向などにより、ドレンを設置する場所が非常に重要になってくる。このドレンの設置数・口径・設置場所がうまくかみ合わないと、水溜りとなり雨水が残留したり、降雨量に排水量が追いつかずオーバーフローすることがある。こういった点でも防水層を設ける必要性は重要になってくる。
また、積雪寒冷地では、冬期にドレンの水が凍結融解を繰り返すことにより、ドレンの破損や樋の破裂による漏水が起こる。
そこでドレンや樋を人工的に熱し凍結を防止するなどの融雪装置を用いる場合がある。改修などでは、新規に設けた防水層の下に、それまでの期間に躯体などに含浸していた水分が封じ込められることとなり、新規の防水層に悪さをしたり却って漏水を引き起こしたりするため、勾配によってドレンに集まってくる水分を効果的に排出するための二重ドレンを使用する。これは新規防水層の上の水と下の水と両方を排出できる機構をもったドレンである。
このようにドレンの種類も状況に応じ多様にあり、防水の機能をサポートしている。
雨水の浸入を防ぐことは防水の主な機能であるが、それ以前に建物の勾配・ドレンの排水機能こそが、雨水の浸入を防ぐ重要なことなのである。

【参考文献】
これだけは知っておきたい 防水工事の知識
伊藤健二・岩井孝次 共著
鹿島出版会

1 / 11