HACCPの防水

これはレストランや食品工場の床が対象になる。
大きなフライヤーと呼ばれる鍋や調理機器がずらりと並ぶ食品加工工場では、床をウェットでするかドライでするか大きな問題となる。HACCPという食品安全のための世界的スタンダードに沿うと、床水洗いするか、床は拭いてきれいにすることで防水の手法と内容は異なる。

厨房や食品工場で使われる床材の要求性能は屋上防水材とは異なり、耐熱性や耐薬品性・耐衝撃性などが要求される。通常はエポキシ系樹脂やビニルエステル樹脂・MMA樹脂・硬質ウレタン樹脂などが多く用いられる。これらの樹脂は概ね硬く伸びがあまりないのが特徴で、屋上やベランダで使用するウレタン防水材とは異なる。屋上防水で使用するウレタン防水材は600%の伸び率を有するのに対し、床で使用する硬質ウレタンは30%の伸び率しか持たない。

また、食品を扱う場所なので常に清潔に清潔に保っていなければならないのと同時に水を使う場所なので表面が滑りにくくならなければならない。この二つの性能は相反するもので、防滑性を高めるためには骨材(硅砂など)を施工時に散布し、表面に凹凸をつけるが、この凹凸があるがために汚れが溜まりやすく清掃が困難になる。逆に清掃をしやすくするために表面をフラットにすると今度は滑りやすくなってしまう。どこで妥協点見つけるか非常に難しい問題である。最近の傾向としては床は清掃しやすいよう平滑に仕上げ、長靴を滑らないようなものにする方向になっているようである。

さらにもっと難しいのは改修工事である。食品工場や厨房の床は過酷な条件で使われるため劣化が進む。新築時にどんなに高性能な床材を採用しても経年劣化は進んでいく。下地コンクリートのクラック、床材の剥がれなどが起きると汚れが溜まり、乳酸・蟻酸の影響でコンクリートの腐食が進んでいく。学校の給食室などは夏休みなどの期間を利用すればよいが、食品工場など営業中の施設の改修はできるだけ短時間で改修をおこなわなければならない。これまでの例で、空港のケータリングルームの改修などは夜の10時に乗り込み、撤去・下地処理・塗り床工事を行い、朝の6時に人が上がれる状態にするという過酷な条件である。

改修工事の場合、下地処理にノウハウが必要なため、かなりの専門的な知識が必要であり、材料の種類も多種多様なため慎重に仕様を選定することが重要となっている。

HACCPではないが、防水を必要とする床としては電算室のOAフロアの下地がある。これは万が一のための防水であり、漏水して電算機の機能がストップした際の多大な損失を防ぐための保険のようなものである。最近ではシックハウスやシックオフィスの問題もあり、環境対応型・無溶剤型の防水材が採用されるケースが増えている。

1 / 11